年末年始の帰省のタイミングに、岐阜県・岩村へ行ってきました。古い街並みと山城を堪能できるステキな街でした。
名古屋駅からJRと明知鉄道を乗り継いで約2時間。岐阜県東部に位置する岩村駅に到着しました。駅に降りると「女城主の里」の看板がお出迎え。
女城主と聞くとNHK大河の題材となった井伊直虎を浮かべる方も多いかと思います。岩村の女城主は井伊直虎ではなく、織田信長の叔母だった「おつやの方」と言われています。嫁いだ先が早くに亡くなり、実質城主として岩村城を切り盛りしていたと伝わっている方です。
少し前に、久々に「信長の野望」をプレイしたのですが、おつやの方が織田家の武将として登場しています。統率・武勇の能力がともになかなかの高数値で、女城主として岩村城を守ったことが反映されているのかも?
名古屋から岩村までは電車で2時間ほど。名古屋からJRに乗り恵那駅へ、そして恵那駅からは明知鉄道に乗り換えて岩村駅へ向かいます。
岩村駅から案内に従って200メートルほど進むと、古い街並みに到着します。
約1キロ続く、岩村城の城下町。古くは江戸時代から続く商家や問屋、住宅が並ぶ渋い街並み。年末に降った雪が残っていて風情を感じさせてくれます。
岩村駅から岩村の城下町のあたりは標高400~500メートルの場所にあるためか、降雪から一週間くらい経過しても結構雪が残るんですね。確かに名古屋市街と比べると気温も3度くらい低かったようです。
そういえば、城下町を歩くといろいろなところで目に付く「ふくろう商店街」の文字。
NHKの朝ドラ「半分、青い。」の舞台になっていたんですね。朝ドラを全く見ないので知らなかった......放映当時の写真を見ると聖地巡礼的に観光客が押し寄せていたようで、放映時は前年の3倍に増えたとか。古い街並みに人が増えるのはなんだか嬉しい。
ドラマの舞台としての設定は「昭和50年台から60年ごろの商店街」ということで、その当時の広告のコピーが商店街に貼られていて気分が盛り上がります。アンバサの250ml缶とか懐かしすぎる!
商店街・城下町そのものが歴史を重ねているので、コピーではない古い広告もたくさん残っていました。「テレス紳士服」の錆具合が渋すぎる。
眼鏡店に展示されていた昭和初期の電飾看板。
「サントリービール 純生」は1960年代から80年代までにかけて販売されていたブランド。店名のかすれ具合が渋さを強調しています。街並みだけでなく、こういった広告にも歴史を感じます。
城下町を歩くと山が近くに見えてきました。
今回の目的地のひとつ、岩村城の登城口へとつながる路地へと向かいます。日本三大山城の一つとも呼ばれる、岩村城に登るぞ!
登城口には岩村城にゆかりのある戦国武将の幟が飾られています。風林火山はおつやの方と結婚した、武田家家臣の秋山虎繁(信友)のものですね。
おつやの方が実質城主だったときに武田家が岩村城を攻め、岩村城は陥落の危機に。おつやの方は相手方の秋山虎繁と婚姻するという条件を呑んで武田家に降伏しています。その後、織田信長が岩村城を取り戻すべく侵攻した際に虎繁・おつや夫妻は降伏したのですが、信長の怒りは収まらず虎繁とおつやの方は磔の刑に処されてしまったとか.......
いざ岩村城攻め!と勇んてやってきましたが、登山道には雪が残っておりました......
ところどころ石段や坂道にアイスバーン化した雪が残っている中、慎重に慎重に足場を選んで進みます。慣れている方には楽勝かもしれないですが、普段雪に馴染みのないエリアに住んでいる私にとっては険しい山城攻めに。
「え、ホントにこの坂道を進むんですか?雪が残っているのに?」
「進め」
セルフ暴君化する私。おっかなびっくり山道を登る私。
雪のない道はほっとします。木々に囲まれていて日光が届きにくいように感じますが、雪は溶けていて不思議。
次々と現れる石垣にテンションを上げ、坂道に残る雪に危機感を強めながら本丸を目指します......!
途中、かわいい城兵がお出迎え。ここにかわいい雪だるまを作ってくれるセンスがステキ。かなりほっこりしました。
いよいよ本丸の石垣が見えてきました!
「六段壁」と呼ばれる本丸虎口の石垣にも雪が残り、荒々しくも荘厳な景色に。
ようやく本丸跡へ到着!岩村城の本丸は標高700メートルの高さにあり、最も高い場所にあった山城と呼ばれているそうです。岩村駅からも300メートル近く上ってきたのかー。遠くには雪をかぶる山々が見えます。
足元に気をつけながら、運動不足の身体で山を登ってきたので息も切れ気味。深呼吸すると、ひんやりと澄んだ空気が心地良いです。
本能寺の変の直前、甲州征伐で武田氏を滅亡に追い込んだ織田信長。信長は甲州征伐に直接参加せず、信濃との国境に程近いこの岩村城で戦況を追っていたのだとか。単純ですが「ここに信長がいたのか」と思うとロマンを感じますね。
山頂から岩村駅が見えました。信長もここからの景色を見てたのかも。
建物は残っていなくても、450年近く前の空気を感じられる空間でした。
歴史とロマンを感じて、厳かな気持ちで下山......この坂道を?(写真は登りの際に撮りました)セルフ暴君になった自分を恨んだ瞬間。
登りはなんとか滑らず転ばずに済みましたが、下りは下手したら怪我どころじゃ済まない危険性もありそう。さすがにカメラをリュックにしまい、滑りにくそうな足場を探しながらじりじりと下山。途中一度派手に転んだものの大きな怪我もなく、カメラも壊れず、無事に城下町まで戻ったときは安堵で思わず笑ってしまいました。そして膝も笑い気味。
やっとのことで城下町に戻ってきて「そろそろお昼でも食べようか」と思ったのですが、年末ということで飲食店もすでにお休みに入っているところがほとんど。営業中のお店にはお客さんが集中していて、待ち時間も長そうな気配。
そんな中、店頭で五平餅を焼いている酒屋さんを発見。「加登宇酒店」さんの店頭は五平餅屋の「あまから 岩村店」として営業していて、焼きたての五平餅をいただくことができます。
ご厚意に甘えてお店の中で五平餅をいただくことにしました。冷えた体にストーブのあたたかさが染みる。
かわいい店員さん。
あったかいお茶と、くるみ味噌たっぷりの五平餅が最高に美味。あっという間に5本平らげてしまいました。五平餅うまいなー。
お腹も満たされたので、再び城下町を散策。岩村のお土産でも探してみましょう。
岩村はカステラが名物とのこと。江戸時代、長崎で蘭学を学んだ医師がカステラの製造方法も学んで帰り、岩村で広めたのがきっかけだとか。今風のカステラより素朴で、優しい味わいでした。地元の方と思われるお客さんが次々とカステラを買いに来てたので、地元でも愛されているのでしょうね。
もう一つの名物は「女城主」の名を冠した日本酒。水がキレイということで日本酒も名物になっています。
「女城主」を醸造しているのは「岩村醸造」さん。1787年創業と240年近く続いている酒蔵さんです。
販売店と酒蔵が繋がっていて、中を見学させてもらうことができます。床には酒や米などを運ぶ際に使われていたトロッコの線路跡が残っていました。
建物だけでなく置かれている道具類にも歴史を感じます。
酒蔵のある中庭には、お酒の仕込みに使う天然水が湧き出ていて、飲むこともできました。仕込み水は優しい口当たり。
せっかくなので代名詞の「女城主」の辛口純米酒を義父へのお土産に。スッキリ飲める辛口!
岐阜県は全国でも酒蔵が多い県なんですよね。キレイな川が多く、酒の仕込みに適しているのだとか。以前行った美濃市や飛騨金山も酒蔵があったのを思い出しました。
お土産も買ったので、帰りの明知鉄道に乗り込み帰路へ。明知鉄道はおよそ1.5時間に1本くらいのペースでやってくるので、電車で訪れるときは時間に注意かもしれません。
明知鉄道の沿線には「農村景観日本一」を誇る展望台があったり「極楽」という名の駅があったり、日本一の急勾配の鉄道駅「飯沼」駅があったりと興味をそそるところがまだまだありそう。終点の明智駅周辺は大正ロマンの息づく「日本大正村」があるんですよね。これはまた行かねばなるまい......!
今回は岐阜・岩村にて古い街並みと山城・岩村城を楽しんできました。今回は年末のタイミングでしたが、また別の季節に訪れたいですね。